クールな御曹司と溺愛マリアージュ
「これって……」

「たまたま他の物と一緒に取り寄せただけだ」

佐伯さんの言葉に、隣にいる拓海さんがプッと吹き出した。


「ありがとうございます!凄く悩んでいたので、助かります」

私の言葉が聞こえていないのか、佐伯さんはなにも言わずにすぐ自分のデスクに戻ってしまった。

「そんなことより、十時半に出るからな」

私と拓海さんに背を向けたままそう言った佐伯さん。拓海さんはまだクスクスと笑っている。


「拓海さん?どうしたんですか?」

「いや、なんでもないよ」

私なにか笑われるようなことしたかな?まぁ、いいか。


「あ、そういえばさっきワームに行くって言ってましたけど、珍しいですよね?」

「そうだね。なんか社長に呼ばれて」

「社長って、ワームの佐伯社長ですか?」

「うん。詳しい事は行ってからになるけど、どうやらコンペの話があるみたいなんだ」

「そうなんですか!?」


空間デザインのコンペってことだよね。もしも最優秀とかに選ばれたとしたら、会社の知名度とかも一気に上がっちゃうのかな?

そうなるのは嬉しいけど、ただでさえ忙しいのに三人にこれ以上負担が掛かるのはいかがなものか……。


「おい、なにボーっとしてんだ。言っとくが、柚原も行くんだぞ」

椅子に座ったまま振り返った佐伯さんが、そう言って私を見た。

「え?私も?」

「大事なコンペの話だからな、全員で行く」


十時半まであと十五分。ていうか、それならそうと早く言って下さいよ。

急いでデスクに戻った私は、やりかけの伝票の入力と本社に送る経費のデータ作成を急ピッチで終わらせた。



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