クールな御曹司と溺愛マリアージュ
既に出掛ける準備をしている三人を見て私も急いで片付けると、デスクの上の電話が鳴った。
「はい、ワームデザイン柚原です」
『お疲れさまです、倉永です』
「有希乃ちゃん!?」
思わず大きな声を出してしまい、三人が一斉に私に視線を向ける。
『初めて電話しちゃいました』
「どうしたの?なにかあった?」
三人の視線を避けるように、受話器に手を当てなるべく小さな声で聞いた。
『部長に聞いたんですけど、ワームデザインの人達って今日こっちに来るんですよね?去年十一月のファイルで聞きたいことがあるんですが』
「それなら私もそっちに行くし、佐伯さんにちょっと時間もらって経理課に顔出すよ」
『やっぱり、恵梨さんもこっち来るんですね』
「行くけど、なんで?」
すると一瞬間を置いた後、有希乃ちゃんが話を続けた。
『言おうかどうしようか迷ったんですけど……恵梨さんも来るならもしかして会うかもしれないし』
珍しくハッキリしない言い方の有希乃ちゃんに、なんだか違和感を覚えた。
『実は……戻って来てるんです』
「なにが?」
『……河地さん』
「・・・・えぇっ!?」
その瞬間慌てて自分の口を抑えたけれど、さっきよりもさらに驚いた表情で三人が私を見つめた。
「おい柚原、そろそろ行くぞ」
「あっはい。……ごめん有希乃ちゃん、もう出なきゃいけないから、後でね」
そう言って電話を切ると、「大丈夫?」と声をかけてくれた拓海さんに、私は黙って頷いた。