クールな御曹司と溺愛マリアージュ


既に出掛ける準備をしている三人を見て私も急いで片付けると、デスクの上の電話が鳴った。


「はい、ワームデザイン柚原です」

『お疲れさまです、倉永です』

「有希乃ちゃん!?」

思わず大きな声を出してしまい、三人が一斉に私に視線を向ける。


『初めて電話しちゃいました』

「どうしたの?なにかあった?」

三人の視線を避けるように、受話器に手を当てなるべく小さな声で聞いた。


『部長に聞いたんですけど、ワームデザインの人達って今日こっちに来るんですよね?去年十一月のファイルで聞きたいことがあるんですが』

「それなら私もそっちに行くし、佐伯さんにちょっと時間もらって経理課に顔出すよ」

『やっぱり、恵梨さんもこっち来るんですね』

「行くけど、なんで?」


すると一瞬間を置いた後、有希乃ちゃんが話を続けた。

『言おうかどうしようか迷ったんですけど……恵梨さんも来るならもしかして会うかもしれないし』

珍しくハッキリしない言い方の有希乃ちゃんに、なんだか違和感を覚えた。


『実は……戻って来てるんです』

「なにが?」


『……河地さん』



「・・・・えぇっ!?」


その瞬間慌てて自分の口を抑えたけれど、さっきよりもさらに驚いた表情で三人が私を見つめた。


「おい柚原、そろそろ行くぞ」

「あっはい。……ごめん有希乃ちゃん、もう出なきゃいけないから、後でね」

そう言って電話を切ると、「大丈夫?」と声をかけてくれた拓海さんに、私は黙って頷いた。



< 113 / 159 >

この作品をシェア

pagetop