クールな御曹司と溺愛マリアージュ
周りから聞こえる冷やかすような声と拍手が、ぼんやりと頭の中をかすめる。

頭が真っ白になるというのは、こういうことなんだ。


わけが分からず、状況が把握できず、全ての思考が停止したかのようにただ呆然と彼の顔を見つめ続けた。


『え……、恵梨さん？これってどういうことですか？別れたんですか？』

有希乃ちゃんがこれだけ戸惑ってるんだ、当の本人である私はもっと混乱している。


別れたつもりはない。多分……。

これだけ自信満々に他の女性を連れて行くと言い切った彼を見てたら、知らないうちに別れたのかもと一瞬考えてみたけど、やっぱりそんな事実は無い。


小柄で女の子らしい白のスカートが良く似合う社内でも可愛い事で有名な笹井さんが、嬉しそうに隣にいる彼を見上げていた。

随分大掛かりな冗談だ。なんて能天気に思うには無理がある。

頭の中でどうにか整理しようとしたって、余計に混乱するばかりだった。



『皆さんには内緒にしていたんですが、少し前から笹井さんとお付き合いをさせてもらってて』


河地さんの彼女を見つめる目はとても優しくて、私に向けられていたそれと同じ。そう思うだけで、涙がこみ上げてきた。




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