クールな御曹司と溺愛マリアージュ
買い物を終えて再び車に乗り込んで、着いた先はもちろんあのマンション。

地下の駐車場に止めると、そのまま中へ通じる道からマンション内へ入っていった。

二度目だとはいえ、やっぱりこのマンションは緊張する。

私はまたあの日と同じように、申しわけなさそうに俯きながらコンシェルジュの前を通った。


エレベーターに乗っていると、徐々に激しくなる心臓の鼓動。

「す、すごいですよね、このマンション。芸能人とかいるのかな?」

「さぁ、知らない。ここには寝る為に帰ってくるだけだからな」



佐伯さんの部屋の前に着き鍵を開けると、いよいよ心臓がピークに達していた。

ここで佐伯さんと二人きりなんて、私は大丈夫だろうか。

コンペが終ってからと決めているけど、きっと好きだと言いたくなってしまう。


「どうぞ」

そう言われて中に入ると、一度だけ見た光景に再び息を飲む。

広くて綺麗な部屋に、大きな窓から見える夜景。やっぱり凄い。


「荷物はソファーの上に適当に置いておけ」

「はい」

そのままキッチンに入った佐伯さん。私は荷物を置いて洗面所で手を洗った。


「じゃー後は頼むぞ」

佐伯さんとバトンタッチするように、キッチンに入った。

鍋やボールなどは既に出してくれている。

鍋なんて切って火をつけて入れて待つだけなのに、なんでこんなに緊張するんだよ。

野菜を切るだけでとてつもなく手が震える。


「おい、本当に大丈夫か?」

カウンターからキッチンを覗き込んだ佐伯さんが、心配そうに呟いた。

「大丈夫です!任せて下さい」


どうしよう……。料理出来ない奴だと思われてないかな?

確かに得意ってほどじゃないけど、一応毎日簡単な自炊はしているし、全く出来ないわけじゃないのに。

佐伯さんに見られてるってだけで、手が思うように動かない。



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