クールな御曹司と溺愛マリアージュ
するとそんな私に見かねたのか、佐伯さんがキッチンに入ってきた。

「あの、私本当に少しは料理できるんです。なんていうか、今日は佐伯さんの家だし緊張しちゃって」

完全に言い訳だけれど、本当にそうなんだもん。


「なに言ってんだ?一緒に作ったほうが早くできるだろ」

そう言って玉ねぎを切り始めた佐伯さん。


「それに、こうして二人で料理をした方が……楽しい」


「……佐伯さん。はい!そうですね」


表情だけではなにを考えているのか今いち分からないけれど、言葉にしてくれると伝わる。

隣に立って料理をしているだけで、本当に嬉しくて幸せです。


こんな日がくるなんて思ってもいなかったな。

もし私が好きだと伝えたら、もうこんな風に佐伯さんの家に来ることも出来なくなるんだろうか。

そう思うと、少しだけ臆病になってしまう。



「よし、鍋は俺が持っていくから、柚原は飲み物を用意してくれ」

「はい、分かりました」

食器棚に並んでいるお皿やグラスは、どれもお洒落で高そうだ。

今日買ったお酒はシャンパンだから、シャンパングラスは……。


「その右端にあるやつだ」

「はい、これですね」


ガラスのテーブルの上にはお鍋とシャンパン。

「というか、お鍋とシャンパンって合うんでしょうか?」

「さぁな。でも食事で大切なことは、どこで誰と食べるのかってことなんだろ?」

「はい、そうですね」


コンロの火をつけると、佐伯さんがシャンパンをグラスに注いだ。

「とりあえず、先に乾杯するか」

「はい」

お互いのグラスを軽く合わせ、シャンパンを口に運ぶ。

「美味しい。飲みやすいですね」

「あぁ、そうだな」



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