クールな御曹司と溺愛マリアージュ
白いソファーに座ると、二人の間に沈黙が流れる。

右側にいる佐伯さんとの距離は僅か数センチ。少し動いただけで、触れてしまいそうになる。


この静かな空気が、余計に私の心臓を激しく揺らしてしまう。


なにか話さなきゃ……。


「あの、ずっと聞きたかったことがあるんですが」

「なんだ」

「どうして……、佐伯さんはどうして、私を採用してくれたんですか?地味で、ダサくて暗かった私を」

そう言って佐伯さんの顔を見つめた。


「外見はいくらでも繕えるが、内面から滲み出るものはなかなか変えられない。面接の時の柚原から、この会社に入りたいという熱意が他の誰よりも伝わってきた」


黙ったまま、私は佐伯さんの言葉に真剣に耳を傾けていた。


「後は、暗かったから……かな」

「暗かったから、ですか?」

「そうだ。簡単に言えば、お前を変えてやりたいと思ったんだ」

「変える……?」


「ああ。本当は前を向いて、もっともっと輝けるはずなのに、それができない柚原を……変えてやりたいと思った」


「佐伯さん……」

「俺の思った通り、お前はどんどん前を向くようになった。そうなっていく柚原を見ていると、俺はいつしか嬉しいと感じるようになっていったんだ」

私が変われたのは、佐伯さんがいたから。


これ以上見つめていたら、きっと泣いてしまう。

こみ上げてくる涙を抑えるように、私は佐伯さんに向かって精一杯の笑顔を見せた。


「そうやって笑う柚原が、愛しいと感じるようになったんだ」


「……え?」


その瞬間、佐伯さんが私の体をそっと抱き寄せた。




< 149 / 159 >

この作品をシェア

pagetop