クールな御曹司と溺愛マリアージュ
Change
*一ヶ月後*
ーートゥルルル、トゥルルル
「は、はい!ワームデザイン柚原です!……あ、はい。お待ちください。拓海さん、サンコウスポーツさんからお電話です」
「ありがとう」
受話器を置いた私は肩の力を抜き、フーッと軽く深呼吸をした。
「おい、柚原」
デスクの前に立った佐伯さんを見上げる。
相変わらず仕事とプライベートにメリハリをつける佐伯さんが、仕事の時は柚原と呼ぶのにも慣れた。
「なんですか?」
「なんですかじゃなくて、電話が鳴るたびにいちいち緊張するのはやめろ」
「無理ですよそんなの」
だって今日は、コンペの結果が出る日だから。
最優秀賞に選ばれれば、実際にそのデザインがホテルのチャペルとして採用されることになる。
緊張するなっていう方が無理な話だ。
絶対に大丈夫だと信じていても、電話が鳴るとビクッと反応してしまうし。
なんとか落ち着いてパソコンに向かおうとしたけれど、再び電話が鳴った。
「はい、ワームデザイン柚原です。はい……あっ、は、はいお待ちください」
震える手で保留ボタンを押した私は、佐伯さんに視線を向けた。
「佐伯さん……お電話です」
軽く頷いた佐伯さんが、受話器を取る。
ついに、その時がやってきたんだ。
私も拓海さんも成瀬君も、息を飲んで佐伯さんを見つめた。
「はい。そうですか……」
なに?なんなのよ、その無表情は!
ドキドキする胸に手を当て祈るような気持ちで、電話を切った佐伯さんの言葉を待つ。
「どうだったんだ?」
拓海さんがそういうと、全く表情が変わらないまま、佐伯さんが口を開いた。
「最優秀賞……取った」
えっ……は?ちょっと、なにそれ!
「やったな」
「ヨッシャー!」
拓海さんと成瀬君の喜ぶ顔に、嬉しくて涙が出そうになるけど、でも佐伯さんには言いたいことが沢山ある!
「その顔なんなんですか?分かりずらいですよ!もっと喜ぶとか、笑うとか出来ないんですか?もう、心臓が止まるかと思いましたよ」
「顔に文句言うな。こういう顔なんだから仕方ないだろ。というか、俺は取れると分かっていたからな」
その余裕な発言が少し腹立つけど、私はそういう佐伯さんのことを、やっぱり凄いと思ってしまう。
「それから、一週間後にホテル主催のパーティーがあるから、全員出席だぞ」
「えっ?パーティー?」