クールな御曹司と溺愛マリアージュ

焦りながらも人の間を縫って佐伯さんのもとに近づいた私は、うしろから声を掛けた。


「あの、佐伯さん、私……佐伯さんが好きです」


自分でもなんでこんなところで言ってしまったのか分からないけれど、不安で言わずにはいられなかったから。


「柚原、おまえなに言って……」

「あら？もしかして、佐伯さんの彼女？」

綺麗な女性にそう言われ、私は挨拶をするように軽く頭を下げた。


「はい、彼女です。私、佐伯さんのことが世界で一番好きなんです」

「だから、お前はさっきからなにを……」

すると女性は口元を手で隠しながら、フフフと微笑んだ。


「可愛い彼女ですね。私はライフスタイルの編集者をやっています」

「へっ？ライフスタイルって、あの雑誌の？」

「そうです。今度うちの雑誌でワームデザインさんを紹介させてくれないかって、今佐伯社長に挨拶をしていたのよ」


「も、もしかして……初対面、ですか？」

「ええ」


その瞬間体の力が一気に抜けた私は、振り返って拓海さんと成瀬君の方に視線を向ける。

二人はこっちを見ながら、明らかに笑っているようだった。


騙された……。もう、二人のせいで私凄い恥ずかしい女になっちゃったじゃん！


「私はお邪魔みたいなので、この話は改めてご連絡致します。受賞、おめでとうございました」

「はい、すみませんでした。ではまた後程」


頭を下げた佐伯さんが顔を上げると、その目を私に向けた。

うっ……怒ってる、よね？

勝手に勘違いして、仕事の相手に恥ずかしい発言しちゃって。