クールな御曹司と溺愛マリアージュ
◇◇◇
各関係者に挨拶を済ませた俺は、会場の隅で同じく挨拶を終えた拓海とワインを飲みながら話をしていた。
「で、恵梨ちゃんには言ったのか?」
「なにをだ」
「俺はこんなに容姿端麗なのに、今まで真剣に恋をしたことがなかったって」
そう小声で耳打ちしてきた拓海を睨んだ俺は、ワインをひと口飲んだ。
確かに今までは仕事にしか興味がなく、これまで付き合った女もいたが、心の底から好きだと思えたのは恵梨が初めてだった。
それに加えてもともと感情があまり表に出ないからか、なかなか俺の気持に気付いてもらえずに悩んだ時もある。
苦手なトマトを美味しいと言った時のことを拓海になんとなく話たら『そんなの気付くわけないだろ』と言われたりもした。
でも、これが俺の精一杯の愛情表現だったんだ。
「鈍感で恋愛下手で似た者同士だったから、見ている俺からしたらまどろっこしくて苛々したけどな。まぁ結果オーライってことか」
結果オーライか。まぁそういうことになるんだろう。
俺が恵梨に好きだと伝えた日も、本当は緊張していたなんてことは……絶対に口が裂けても言えないな。
視線の先にいる恵梨は、お酒を飲みながら成瀬と楽しそうに話しをしている。
あんなに下を向いていた恵梨が明るく前向きになってくれた。それだけで、俺は嬉しい。
「恵梨、変わったよな。面接の時とはまるで別人だ」
「そうだな。でも俺に言わせてもらえば、渉も変わったよ」
「俺が?」
「ああ。恵梨ちゃんと出会ってから、よく笑うようになった」
拓海の言葉に視線を下げた俺は、思わず笑みを漏らす。
確かにそうだ。あいつといると、幸せだと思えるから。
俺達に気が付いた恵梨が手を振りながら笑顔で近付いて来て、その細い手を伸ばしてきた。
俺はその手を、そっと握る。
どんなことがあっても、俺はこの手を離さないと誓う。
ずっとずっと、俺は恵梨を……愛しているから。
◇◇◇
ーENDー