クールな御曹司と溺愛マリアージュ
『お、お疲れさまです』

『お疲れ。コーヒー頼んだ?』

いつもの笑顔で私を見上げた河地さんに対して、何故か緊張してしまう自分が嫌だった。


『いえ、今日は抹茶ラテにしました』

河地さんと一緒にいてコーヒー以外の物を注文したのは初めてで、私なりのちょっとした抵抗だ。


向かい側に座った私は無言で彼を見つめるけれど、『ん?』と不思議そうに首を傾げている河地さん。表情もとても落ち着いている。

駄目だ、やっぱりハッキリ聞くしかない。


だって、どちらにしろ彼は笹井さんを彼女だと紹介したわけで、今更何を話したって私はもう彼女ではないんだから。

それなら私の頭の中の混乱を解決するだけだ。この涼しい顔をした河地さんが、何を語るのか……。



『あの、お話があります』

『うん、なに?』

動揺した様子は微塵も感じない。


『ハッキリ言わせて頂きますけど……私たち、付き合ってましたよね?』

『付き合ってたね』

そ、即答!悩みも迷いもしない。この余裕は一体なんなの?


『だ、だったら、私と付き合ってるのにどうして今朝笹井さんと付き合ってるなんて、みんなの前で言ったんですか?』

そこで初めて、私の目を見つめながら彼の動きがピタッと止まった。

さぁ、何て答えるの?



『えっ?ちょっと恵梨、なに言ってるの?俺たちとっくに別れたじゃん』


・・・・・・・・


『……は!?』



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