クールな御曹司と溺愛マリアージュ
彼の言い分はこうだった。

三週間前、自分はLINEで別れの言葉を伝えたと。そしてそれに対して私は分かったと返したらしい。


彼に言われた日のLINEを確認すると、その日は少し喧嘩っぽくなっていた。

大した事ではないけれど、約束した日に仕事で会えないかもしれないと言われて、私が少しムキになってしまったのだ。


つらつらとLINEでのやり取りが続いた後、彼はこう送ってきた。

[ごめん、俺が悪かったよ。もう終わりにしよう]

そして私は、[分かった]と送った。


だって、ごめんって謝ってきてるじゃん。だから私は、喧嘩はもう終わりにしようと、そういう意味だと捉えたんだ。


『ね?終わりにしようって俺が言ったら、恵梨だって分かったって言ってるでしょ?これで俺たちの関係は終わったんだよ』


ね?じゃないよ!こんなにも分かり難くて、しかもLINEで言うことなの?

いい大人なんだから直接会って話すとか、せめて電話でしょ?LINEなんかで本当の気持が伝わるはずないんだから。


色々思う所はあるけれど、今朝私が見た光景は紛れもない真実で、河地さんは新しい彼女と香港へ行く。これが現実なんだ。


少しだけ腑に落ちないけれど、別れてたった数週間で新しい彼女を作り、しかも元カノがいる場所で結婚を前提にとか言っちゃうような人なんだから別れて正解だと、自分に言い聞かせた。


『ひとつ聞いてもいいですか?』

『いいよ、どうぞ』

私は乾いた喉を潤すように抹茶ラテをひと口飲み、もう一つ気になっていた事を口にした。


『河地さんが別れを選んだのは、あの喧嘩が原因ですか?それとも、他になにか……』

『それ、言った方がいい?』

そう言うという事は、喧嘩以外にも原因があったという事だ。

『はい。正直分からないので、教えて下さい』


香港へ行く前の置き土産に、今後の為にも参考になれば……そのくらいの軽い気持ちだった。


けれど私は、この質問をしたことを酷く後悔した。




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