クールな御曹司と溺愛マリアージュ
「まさか本当に受けるなんてね」

クスクスと笑いながら話している声は、私に向けられているものだ。しかもそれが誰の声なのかも分かっている。

私の二人前に座っている、総務部の初見璃子(はつみりこ)。


パーマなのか毎日コテで巻いているのか知らないけど、クルクルときれいに巻かれたブラウンの長い髪。いつもより丁寧に巻かれている所を見ると、相当気合が入っているのがうかがえる。

化粧もバッチリで、どこかの雑誌そのままのコーディネートなのかと思うくらい服装も完璧だ。



「なんていうか、今日も独特だよね。デザインの会社なんだから、あのセンスじゃね～」


初見さんの嫌味にはある程度の免疫は付いてたつもりだったけど、久し振りに聞くとやっぱりダメージが大きいな。

隣の人と話しているならもっと小声で話せばいいのに、わざと聞こえるような声を出すのも初見さんのやり方だ。


「面接受けたって恥かいて終わりなのは目に見えてるのに」


私は視線を下げ、茶色い床を見つめながら自分の拳をグッと握り、唇を噛みしめる。


悔しいのは馬鹿にされたからじゃなくて、否定できない自分が情けないから。

センスがないってことは分かってる。自分が良いと思う物と、それを傍から見た時の評価が正反対だということも。




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