クールな御曹司と溺愛マリアージュ
ガラス張りの明るい光に包まれたお店は、どう見ても飲食店ではない。

夜だからか余計にお店の明かりが目立っていて、私の目に入ってきた看板には眼鏡を模った絵が描かれている。


「あの、ここは?」

「眼鏡屋に決まってるだろ」

それはそうだろうけど、でもどうして。


「いいから来い」

佐伯さんは戸惑っている私の手首を掴み、そのままお店の中へ足を踏み入れた。


「いらっしゃいませ」

つまり、この眼鏡はダサいから新しいのを買え。と、そういう意味なのかな。

佐伯さんは言葉数が少ないから、正直何を考えているのかいまいち分からない。


私の手首を掴んだまま、佐伯さんは店内に並んでいる眼鏡を順に見ていった。言いたことはあるのに手首は酷く熱く感じるし、緊張と不安で喉が詰まる。


すると佐伯さんは手を離し、眼鏡ではなく突然私の顔を見つめた。

ただジッと黙ってその綺麗な目で見つめられると、余計に何も言えなくなる。


「あ、あの……」

「柚原は、自分のことを分かっていない」

「え?」

「自分に似合う物がなんなのかを知るには、まず自分と向き合え」

佐伯さんはそう言って、私の体を店内にある鏡に向けさせた。


「今まで焼いたことはないのかと思うくらい肌はやけに白い。腫れぼったいが、目も割と大きいし二重だ。鼻も眼鏡が合うくらいの高さは一応ある」


えっと、これは褒められているのか、それとも貶されているのか……。目が腫れているのは昨日泣いたせいなんですけど。


困惑していると、私のうしろから佐伯さんの手がスッと伸びてきて、そのまま掛けていた眼鏡を外した。

そして、もう片方の手に持っていた眼鏡を再びうしろから手を回して私の顔に掛けてくれた。


鏡越しに見つめられると痛いくらい胸が激しく揺れ、鏡に映る自分の顔がみるみるうちに赤面していく気がして、思わず俯いた。


「ほら、ちゃんと見てみろ」

耳元で響く低い声に、ドキドキと波打つ胸に手を当てながら、ゆっくりと顔を上げた。



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