クールな御曹司と溺愛マリアージュ
嘘からのプレゼント
*
あれから二週間、私以外の三人はほぼ毎日遅くまで仕事をしていた。
面接の時に拓海さんが言っていた言葉通り、依頼がある時は時間なんて関係なく仕事に追われる。
私ですら、暇だった一日目が嘘のように頼まれた仕事を必死にこなす毎日を送っていた。
だけど私だけは、決まって十九時にはあがるように佐伯さんに言われてしまうのが気掛かりで……。
みんなは忙しいのに自分だけ帰るのが嫌で、一緒に残業したいと申し出てもそれをことごとく断られていた。
いてもそんなに役に立てないから当然と言えば当然だけど、寝る間を惜しんで働いているみんなの助けになれない自分が情けないな。
「柚原ちょっといいか」
少しは慣れたつもりだったけど、佐伯さんに名前を呼ばれるとまだ少しドキッとしてしまう自分がいる。
「はいなんでしょうか」
私の席の横に立った佐伯さんを見上げた。
「調べてもらいたいことが幾つかあるんだが、拓海に頼まれた広告掲載の方はどうだ?」
「そっちのほうは明日最終的な確認の連絡がくるので大丈夫です」
「そうか。じゃー、これ頼む」
メモ用紙に相変わらず綺麗な字で書かれている文字を見つめる。
「とりあえずこの住所近辺の土地柄や、周りにある店舗とか諸々調べてくれ。あと営業かける際の参考になるから、こっちのデータを分かりやすいようにまとめてくれ」
「どちらを先にやった方がいいとか、ありますか?」
メモリーカードを受け取った私は、紙を見ながら問いかけた。
「急ぎではないから、どっちでもいい」
「分かりました」
私がパソコンに向き直すと、戻ろうとした佐伯さんが再び私の前に立った。
まだ伝え忘れたことでもあるのかな。