クールな御曹司と溺愛マリアージュ
「あー!!」

存在感を消すように、ずっとひとり黙々と仕事をしていた成瀬君が突然大声を出して伸びをした。

「ビックリした」


デスクに顔を伏せた成瀬君をうしろから覗き込む。

「大丈夫?」

みんな忙しいけど、担当の成瀬君は特に大変だからな。ちゃんと寝てるのかな。

「恵梨ちゃん、俺……腹減った~」

椅子にもたれ掛かった成瀬君は、そう言って口を開けながらお腹をさすってる。

「そっか、お腹空いてたら集中できないしね。私なにか買ってきますよ」

みんなもお腹空いてるよね、そういう私も実はペコペコだし。


「佐伯さんと拓海さんの分も買ってきますけど、何がいいですか?」

「俺ね、どんどんの豚玉丼がいいー」

手を上げて言った成瀬君の言葉を一応忘れないようにメモを取った。

「駅前のどんどんね。おふたりは?」

「俺は中華丼がいいな。でも一人で行かせるの心配だから、渉も一緒に行ってこいよ」

「はぁ?」

明らかに嫌そうな表情をした佐伯さんを見て、私は焦って首を振った。


「いやいやいいですよ!子供じゃないんですから、これくらいひとりで行けます」

拓海さんてば、急に変なこと言い出すんだから。佐伯さんだって忙しいし、迷惑だと思われたくないよ。

急いで小さなポーチに財布を入れ替えて、ドアノブに手をかけた。


「佐伯さんは何がいいですか?早く言わないともう行っちゃいますよ」


すると何も言わずに近づいてきた佐伯さんが、私の肩の上から腕を伸ばしてドアに手を当てた。


「さっさと行くぞ」


「えっ……」



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