クールな御曹司と溺愛マリアージュ
一緒に行けと言われた時は凄く嫌そうな顔をしたのに、行くんだ。
佐伯さんの考えていることが全く読めない。

しかも入社して二週間が過ぎたというのに、未だ佐伯さんのプライベートが全然見えてこない。

仕事中の佐伯さんだったら少しは分かってきたつもりだけど、普段の佐伯さんも同じなのかな。


基本無表情で感情を表に出さず、口調も冷たく意地悪なところもある。かと思えば気遣いなのかと取れるような言葉を掛けてくれたり。

そして本当に時々、運がよければ見られる笑顔は最高に素敵だということだけは分った。


駅に向かって佐伯さんのうしろを歩いていると、明日行こうと思っていたお店が目に入ってきた。

そういえば、百均で買う物があったんだった。

「すいません佐伯さん、ちょっと寄りたいんですけどいいですか?事務用品買いたくて、すぐに終わりますんで」

「別にいいけど」

はぁ、なんか佐伯さんにこういうこと言うのも緊張するな。心が読めないから、本当は面倒くさいのかもとか考えちゃうし。


佐伯さんは目に付いた商品を眺めながら、目的の物を探す私のうしろを歩いていた。

佐伯さんについてこられると、なんかプレッシャーだな。私はやっぱり佐伯さんのうしろを歩く方が合ってる。



「あとこれだ」

成瀬君に頼まれていた付箋を手に持って振り返ると、いると思っていた佐伯さんの姿が見当たらない。


辺りをキョロキョロと見渡すと、お店の棚の上から佐伯さんの頭が見えた。

夜なのに店内は混んでいて人が沢山いるけれど、あのサラッとした綺麗な髪はどこにいても見つけやすい。


周りの人よりも少し高い背がとても目立っていて、ふと振り返った時の顔に心臓が波打つ。

こんな風に見えてしまうのは、私の中でなにかが起こってるからなんだろうか。


いい加減認めろと、本心を伝えるかのように激しく揺れる心臓に必死で抵抗している自分がいた。



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