クールな御曹司と溺愛マリアージュ
悩みからの正直な気持ち
 *

ワームデザイン初の仕事を任された成瀬君はあれから締め切りまでの間、佐伯さんや拓海さんに相談したり何度もデザインをやり直したりと悪銭苦闘しながらも、とても素晴らしいデザインを完成させた。

クライアントからも絶賛され、デザイナーとしての自信をつけた成瀬君のデザインが形になるのが本当に楽しみで仕方がない。


「じゃー俺そろそろ行きますね」

お昼前になり、佐伯さんと仕事の打ち合わせをしていた成瀬君が会社を出た。


「成瀬君、どこに行ったんですか?」

「例のカフェだ」

「成瀬君が担当した?」

私の言葉に頷いた佐伯さんは、いつものほうじ茶を自分のカップに注いだ。


「デザインが終わっても改装中の店舗に行ったりするんですか?」

「あたり前だ。施工はうちが契約している会社が行うが、デザインがどう仕上がって行くのかを確認するのも大事な仕事だ。工事が無事に終わり、仕上がりにクライアントが満足してくれて初めてひとつの仕事が終わる」

「なるほど……」

少しはこの仕事について分かってきたつもりだったけど、まだまだだな。

私はあくまで事務員だけど、やっぱりもっとこの仕事のことを知りたい。

何か役に立つような資格を取りたいって言ったら、佐伯さんに鼻で笑われちゃうかな……。



「戻りました」

「お帰りなさい」

「ただいま恵梨ちゃん。今日は湿気が酷くて暑いよ」


「拓海、どうだった」

佐伯さんの問いにどこか満足気に頷きながらジャケットを脱いだ拓海さんは、テーブルに乗せた鞄の中から資料を取り出した。


「決まったよ。次のクライアントだ」





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