クールな御曹司と溺愛マリアージュ
「経理課ということですけど、ワームデザインで採用するのは一名だけなので、事務職全般をやって頂くことになりますが、その辺りはどうでしょうか」

「ワームでは経理課ですが、経理以外の仕事も任された事があります。どんな仕事でも、会社の力になれるよう精一杯やりたいと思っています」

「分かりました。次に、ワームと違って勤務時間などデザインの締め切りに合わせるので、休日もバラバラです。締切が近ければ徹夜という事もあるかもしれませんが、それは大丈夫ですか?」

「はい。大丈夫です」

「ちなみにもしかしたら力仕事も必要になってくるかもしれないんですが、体力に自信はありますか?」

「はい!学生時代は陸上部で足腰には自信がありますし、風邪もここ数年引いていません」


未だ何も喋らない佐伯社長の存在を気にしつつ、私は迷うことなく質問に答えていった。


「では最後に、ワームデザインの面接を受けようと思った理由を教えて下さい」


一瞬だけ軽く深呼吸をしもう一度姿勢を整え、私は二人の顔を交互に見ながら答えた。


「佐伯社長の挨拶を聞いた時、心を強く揺さぶられたような気持になりました。
空間デザインの事は何も分かりません。それでもみなさんの役に立てるよう精一杯仕事をして、社長の言葉にあった目標が達成する所を私も見たいと、そう思いました。
とても単純な理由なんですが、ワームデザインの事務は私でなければ駄目だと思われるくらい頑張りたいと思っています」


大学生の時に受けたワームの面接では、もっと具体的に会社の商品などの例を挙げて答えていたと思う。

だけど今は、これが私の正直な気持ちだった。

具体的な事は何も言えないけれど、こんな私でも必要とされるように頑張りたい。ただそれだけだった。


すると、今まで黙っていた佐伯社長が少しだけ身を乗り出して私を見つめた。

何か言われる。そう思った途端、急に心臓の鼓動が早まりだす。



「……それは、自分で選んだのか?」

私の心臓には、どうも佐伯社長の低い声は合わないらしい。ドキドキと勝手に胸が鳴ってしまう。


「えっと、それ……というのは」


「その服のこと」



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