クールな御曹司と溺愛マリアージュ
「渉のことは?最初と少しは印象変わった?」

「……えっと」


突然の質問に戸惑っていると、タイミング良く料理が運ばれてきた。

「お待たせしました」


目の前に置かれた、薄く焼いた卵に包まれた昔ながらのオムライスをジッと見つめる。


「基本冷静で淡々としてて、話し掛けても興味ないみたいに冷たい言葉ばかりだけど……」


でも、時々見せる笑顔と優しさを、私は知ってしまったんだ。


黙り込む私を見ながら微笑む拓海さん。

「ああいう奴だから誤解されることもあるけど、誰よりも真面目だし仕事でもプライベートでもつねにあいつは真剣なんだ」

「はい。佐伯さんの仕事に対する気持ちは本当に尊敬できます。ちゃんと寝てるのかなって心配になるくらいいつも遅くまで会社に残ってるみたいだし、朝だって誰よりも早く会社に来てるし」

「不思議だよな。渉と一緒に仕事してると、自然と自分も頑張ろうって思えるんだ。良い意味で社長っぽくないっていうか」

「そうですね。なんかもっと皆さんの役に立てるように、資格とか取りたいなーなんて、そんな無謀なこと思ったりして」

「無謀なんかじゃないよ。それ、渉に言ったら喜ぶんじゃないかな?努力する人のことは、あいつ好きだから」


好き……。意味は違うと分かっていても、その言葉に少しだけ動揺した。


仕事も頑張って、自分のコンプレックスも乗り越えられたら、少しは私を見てくれるだろうか。

臆病な心と向き合って、自分を磨く努力をしたら……。


「あの、拓海さん」

「なに?」

「私……私って、ダサいですか?」

予想外だったのか、驚いて目を丸くした拓海さんはハンバーグを持ち上げたまま止まってしまった。


「自分でもセンスないって分かってるんですけど、急に服装を変えたりするのは怖くて。人にどう思われてるのか気になってしまうんです」

「それは、前に聞いた元彼が原因で?」

静かに頷いた私を見て、少し考えるように腕を組んだ拓海さん。




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