クールな御曹司と溺愛マリアージュ
「ダサいとは思わないかな。好みは人それぞれだし、好んで選んだ服なら俺はダサいなんて思わないよ。
でもね、何か違うな?とか、変わりたいとか綺麗になりたいとか恵梨ちゃんがそう思ってるなら、もっともっと綺麗になる方法はいくらでもある」

「こんな私でも……ですか?」


「お洒落な人っていうのはさ、なにも最初からお洒落なわけじゃないんだ。みんな自分で色々探して試して、そうやって自分なりのお洒落を楽しんでる。センスがいいか悪いかなんて二の次で、自分が満足してたらそれが自然と表情にも表れてくる」

「表情にも……?」

「そうだよ。いつだったか、恵梨ちゃんが雰囲気の違う服を着てきた時あったでしょ?あの日の恵梨ちゃんの顏、いつもより明るく見えたもん」


佐伯さんがくれた服を着た時に、今までよりも少しだけ自分が好きになれた気がして、もっと変わりたいってそう思った。

それが自然と表情にも表れてたってことなのかな。


「自分の為じゃなくても、誰かの為に綺麗になりたいって思ってるなら、それはとてもいいことだと思うよ。自分を変えるチャンスだしね」

誰かの為に……。佐伯さんの隣にいても恥かしいと思われないように、佐伯さんに綺麗だと思われたくて……。

そんな理由でも、私は変われるのかな。


「あのさ、おすすめのファッション雑誌とか後でメールで送るよ。まずは似合わないって決めつけないで、色々見てみたら?」

「はい、ありがとうございます。今まで無理してると思われるんじゃないかとか周りの目を気にしてたけど、もうそんなの関係ないんですよね」

「うん、そんなの関係ないよ。だってうちの会社にはなんでもハッキリ言う奴がいるんだから、あいつの意見を参考にすれば段々分かってくるんじゃない?」


そうだ、私にはあの意地悪なアドバイスがある。

佐伯さんのキツイ言葉にはもう慣れたし、その奥にある優しさも知ってる。何を言われても面接の時みたいに落ち込んだりしない。

今日は有希乃ちゃんと飲む約束をしてるから、その前に雑誌を買って服も見に行ってみよう。

綺麗な人は、きっとみんな努力してるんだ。色んなことを言い訳にして変わろうとしなかったから、だから私は河地さんに振られた。

あの展開はさすがに予想できなかったけど、でも原因は私にもあったんだ。

それに河地さんの時にはなかった気持ちを、今は確かに感じている。

変わりたい、綺麗になりたい。佐伯さんに……私を見てもらいたいと。



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