クールな御曹司と溺愛マリアージュ
「どれも全部本当の渉なんじゃないかな?完璧に見えるけど実は不器用なところもあるし、恵梨ちゃんにコンプレックスや悩みがあるように、もしかしたらあいつにもなにかあるかもしれないよ」

「なにか……ですか?」


社長で実はワームの御曹司でもある佐伯さん。しかも容姿は完璧で、拓海さんと同様に女性が近づいてこないはずがない。

そんな佐伯さんにも、私みたいに悩みがあるのかな?


掴みどころのない人だけど、だからこそ突然優しい姿を見せられたりしたら、きっと誰だってときめいてしまう。


「あいつも三十一歳だし今まで恋愛してないわけないけどさ、アラサー男だって時には恋に悩むこともあるよ。女性みたいに友達同士で悩みを打ち明けたりしないから余計にね」

佐伯さんが恋に悩んでいる姿なんて、全然想像できない。

どちらかと言えば、悩むのが面倒だから止める。とか言い出しそうな人だから。


「佐伯さんが好きになる人って……どんな人なんだろう」

心の中で思っていたつもりが、気付けばポツリと呟いてしまっていた。

「基本的に男はみんな子供だから、女性よりもずっとね。ちなみに今は渉も彼女はいないはずだよ」

そう言って拓海さんはフッと微笑み、残りのハンバーグを口に運んだ。


佐伯さんを好きになってしまったけれど、私はどうすればいいんだろう。

自分を変える努力をしたとして、その後は?

恋愛するのが怖くて諦めていた私は、アピールの仕方さえ忘れてしまった。


「あいつがモタモタしてるから、俺が取っちゃおうかな……」

「え?今なにか言いましたか?」

「いや、別に。そろそろ戻ろうか。成瀬も戻ってくるだろうし」

「はい、そうですね。あーお腹いっぱい、これでまた仕事頑張れます」


美味しいご飯を食べたら元気になれるなんて、そんな単純な私を見て微笑む拓海さんと一緒に、蒸し暑い空気が漂う中会社に戻って行った。




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