クールな御曹司と溺愛マリアージュ
有希乃ちゃんとの待ち合わせ時間が近づいてきた為、悩みに悩んで購入した服を持ってデパートを出た。

紙袋の中には白のカットソーとベージュのパンツが入っている。自分なりに精一杯悩み、店員さんにも相談して決めた服だ。

サイズも大き目ではなく、どちらかというと体のラインが出るような細身の物を選んだ。

明日これを着て行った時に佐伯さんがどう思うのか、考えただけで緊張するな。


デパートから歩くこと五分、赤いのれんが目印のいつもの焼き鳥屋の前には有希乃ちゃんが立っていた。

「恵梨さーん!お疲れさまです!」

「お疲れさま。ごめんね、待たせちゃって」

「いえいえ、全然。久しぶりに恵梨さんと飲めて嬉しいですよ。聞きたいことも沢山あるし」

そう言ってニヤニヤしながら、何かを企んでいるかのような意味深な表情を浮かべる有希乃ちゃん。

恋愛できずにいた私を知っている有希乃ちゃんだから、電話で相談した日からきっと気にかけてくれていたんだろう。


店内に入ると、安くて美味しいということもあってか、平日にも関わらず空いている席はカウンターだけだった。

「二人だし、カウンターでもいいですよね。とりあえずお腹空いたからいつも通り頼みますよ」

「うん、宜しく」


一通り注文を終えビールで乾杯をした私たちは、何故か数秒間互いに見つめ合った後、二人でプッと吹き出した。

「久し振りすぎて、なんか嬉しくて見つめちゃいましたよ」

「私も。こんなことで笑えるなんて、私達もまだまだ若いね」


有希乃ちゃんからワームでは特に変わりなく、私がやっていた仕事も経理のみんなで振り分けたから何の問題もないということを聞き、少しホッとした。

引継ぎが急だった為に、有希乃ちゃんが大変になったんじゃないかと心配していたから。


「何かあったら電話しようと思ってたんですけど、恵梨さんが作ったマニュアルが完璧すぎて全然困らなかったですよ。寧ろ用事もないのにかけようかと思ったくらいです」

「それならよかった」

「ていうか、心配なのは恵梨さんの方ですよ。時間もったいないから本題入りますけど、その後どうですか?」



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