クールな御曹司と溺愛マリアージュ
何を頼もうか悩んでしまったから、結局オーナーのお薦めを頂くことにした。


運ばれてきたのは、フレッシュトマトとモッツアレラチーズのパスタ。

ランチで一番人気のメニューらしく、見た目は凄く爽やかで、真ん中に添えられたバジルがトマトの赤を引き立たてている。


「ごゆっくりどうぞ」

オーナーに会釈をした私は、パスタをジッと見つめる。


「美味しそう」


佐伯さんと二人きりというだけでも贅沢なのに、ランチにパスタなんて、私にとっては相当な贅沢だ。


「いただきます」

フォークを手に持ちふと目の前にいる佐伯さんに視線を向けると、佐伯さんは黙ったままパスタを見つめている。

佐伯さんも、美味しそうだな~とか思ってるのかな?


「あの、食べないんですか?」

「……」

「佐伯さん?」


一瞬眉を潜めた後、ふーっと深呼吸した佐伯さん。


「実は……」

「どうしたんですか?」


「実は若干……トマトが、苦手なんだ」



・・・・・・えっ?


恥ずかしそうに私から目を逸らした佐伯さん。私は思わず吹き出してしまった。

まさかあの完璧な佐伯さんの弱点が、トマトだなんて。子供みたいで可愛い。


佐伯さんのことだから、オーナーのお薦めがトマトのパスタだって分かっても、きっと苦手だと言えなかったんだろう。


「勘違いするな、食べれないわけじゃない」

そう言って意を決したようにフォークを握りしめた。



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