クールな御曹司と溺愛マリアージュ
いつもは怒られてばかりの立場だけど、こんな風に戸惑っている佐伯さんを見てたら、どうにか助けてあげたいという気持ちになった。
勿論大人なのだから、私が代わりに食べてあげるなんてことはしないけど……。
「実は、私も子供の頃トマトが苦手だったんです。でも、ある日を境に大好きになりました」
佐伯さんは私の話しに興味を示したのか、少しだけ身を乗り出した。
「家でトマトが出てくるといつも残してたんです。でもある日、大好きなお婆ちゃんの家に行った時、トマト畑へ連れて行ってくれて……」
あれは私が小学校四年生の夏休み、お婆ちゃんが育てているトマトを見せてもらった時のこと。
畑にはまだ青いのから真っ赤に熟れたトマトまでずらっと並んでいて、どうやって育てたのかをお婆ちゃんが一生懸命教えてくれた。
そしてトマトの収穫をお婆ちゃんと一緒にやって、採れたトマトはそのまま晩御飯に並んだ。
「お婆ちゃんはシワシワの顔を更にクシャッと綻ばせて、『美味しいから食べてごらん』って言ったんです。だから私は、ずっと避けてきたトマトを口に入れました」
「それで、どうだったんだ?」
「凄く、凄く美味しかったんです。最初は自分で収穫したからかなって思ったんですけど、後から母に聞いたら、家で出てくるトマトもお婆ちゃんが送ってくれた同じ物だったんだよって」
家で食べた時は美味しいなんて思わなかったのに、お婆ちゃん家で両親や兄、従妹も一緒にみんなでワイワイしながら食べたトマトの味は格別だった。
「つまり、味ももちろん大切だけど、本当に大事なのは、どんな場所で誰と一緒に食べるか……だと思うんですよ。要は気持ちの問題です」
あっ、でもそれじゃあ佐伯さんの苦手意識は克服されないか。
場所は素敵なイタリアンレストランだけど、今一緒にいるのは私だし……。
すると佐伯さんは手を動かし、パスタをゆっくりと口に運んだ。
「ど……どうでしょうか?」
味わうようにゆっくりとパスタを飲み込んだ後、顔を上げて私を見つめる。
「本当だな……」
「え?」
「今まで食べたトマトの中で、一番美味しいような気がする」
私の思い出話に気を遣ってくれたのかもしれないけれど、佐伯さんが苦手だと言ったトマトを美味しそうに食べてくれたことが、本当に嬉しかった。
その『美味しい』は、私と一緒にいるから……なんて、そんなわけないよね。
勿論大人なのだから、私が代わりに食べてあげるなんてことはしないけど……。
「実は、私も子供の頃トマトが苦手だったんです。でも、ある日を境に大好きになりました」
佐伯さんは私の話しに興味を示したのか、少しだけ身を乗り出した。
「家でトマトが出てくるといつも残してたんです。でもある日、大好きなお婆ちゃんの家に行った時、トマト畑へ連れて行ってくれて……」
あれは私が小学校四年生の夏休み、お婆ちゃんが育てているトマトを見せてもらった時のこと。
畑にはまだ青いのから真っ赤に熟れたトマトまでずらっと並んでいて、どうやって育てたのかをお婆ちゃんが一生懸命教えてくれた。
そしてトマトの収穫をお婆ちゃんと一緒にやって、採れたトマトはそのまま晩御飯に並んだ。
「お婆ちゃんはシワシワの顔を更にクシャッと綻ばせて、『美味しいから食べてごらん』って言ったんです。だから私は、ずっと避けてきたトマトを口に入れました」
「それで、どうだったんだ?」
「凄く、凄く美味しかったんです。最初は自分で収穫したからかなって思ったんですけど、後から母に聞いたら、家で出てくるトマトもお婆ちゃんが送ってくれた同じ物だったんだよって」
家で食べた時は美味しいなんて思わなかったのに、お婆ちゃん家で両親や兄、従妹も一緒にみんなでワイワイしながら食べたトマトの味は格別だった。
「つまり、味ももちろん大切だけど、本当に大事なのは、どんな場所で誰と一緒に食べるか……だと思うんですよ。要は気持ちの問題です」
あっ、でもそれじゃあ佐伯さんの苦手意識は克服されないか。
場所は素敵なイタリアンレストランだけど、今一緒にいるのは私だし……。
すると佐伯さんは手を動かし、パスタをゆっくりと口に運んだ。
「ど……どうでしょうか?」
味わうようにゆっくりとパスタを飲み込んだ後、顔を上げて私を見つめる。
「本当だな……」
「え?」
「今まで食べたトマトの中で、一番美味しいような気がする」
私の思い出話に気を遣ってくれたのかもしれないけれど、佐伯さんが苦手だと言ったトマトを美味しそうに食べてくれたことが、本当に嬉しかった。
その『美味しい』は、私と一緒にいるから……なんて、そんなわけないよね。