孤独なシンデレラに永遠の愛を捧ぐ。
XVIII.崩壊
天気予報は晴れだったのに空には厚い真っ黒な雲が浮かび、やがてザーザーとバケツをひっくり返したような雨が降り始めた。
私は常備している赤い折りたたみ傘を取り出した。
街の人々は足早に歩みを進め、突然の雨にうんざりとした表情だ。
でも私は、この天気が嫌いじゃない。
むしろ雨は好きだ。
暑くないし、嫌な音は消してくれる。
それにこの湿っぽい空気も、太陽に熱されたコンクリートが濡れたときの匂いも結構好き。
濡れるのはあんまり好きじゃないけど。
今日は学校の補習は無く、塾の夏期講習だけだった。
だから塾が終わった今、急ぎ足で帰宅している。
今朝、お義母さんに帰ってきたら家事を手伝いなさいと言われたからだ。
その声は相変わらず氷なんかよりも冷たくて抑揚もなかったけど、私はお義母さんの手伝いを出来ることが嬉しかった。