さよなら、群青。
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「相席、いいかしら?」
「あ、はい、どう……ぞ…」

お昼休みのランチ。
予約しないと入れないお洒落なカフェは、やはりいつも満員で、こうやって相席をお願いされるのも珍しくはない。珍しくはないのだけど、

「あら、うちの会社の子じゃない。よくここの席取れたわね?」
「…あ、ハイ」

まさか、この人と相席になるなんて思ってもみなかった。



私、西迫琴音。22歳。
至って平凡に過ごしてきて、勉強も恋も至って普通な、どこにでも居るような女とはきっと私のこと。
入社して半年。やっと仕事や環境にも慣れ、こうやってカフェで外食する余裕も出てきた。会社から徒歩5分もかからないこのカフェは、私の会社の利用者が圧倒的に多く、予約しておかないと入れない事なんてしばしば。…だからこそのこの状況なのだが、予想していなかったこの状況に驚かずにはいられない。

「よくここには来るの?」

"日替わりランチを1つ"と店員に頼みながらも、その人はやんわりと私に笑いかける。ふわっと花が咲いたような、笑み。一般的に言えば、"綺麗な人"なのだが、素直にそう思うことは出来ない。

「あ、えっと、よく、ではないです」
「ふーん?」

ぽってりした唇には桃色のリップが煌めいていて、艶っぽい。ああ、素敵な人だな。…と、入社した頃なら絶対に思っていたに違いない。

「"西迫琴音"ね…ふふっ」
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