届かないこの想いを、胸に秘めて。

~香奈恵side~




亀裂を作ったその日の夜。
私は初めて涙を流した。


とてもとても悲しかった。


雪菜の態度が2週間前から変わったことに。

親友だと思っていたのに。

私には何も言わないで、目を見開いて、ただ涙を流していることに。




……ちがう。
自分にコントロールが効かなかったことに、だ。



友達に全く興味を持たなかった私は、高校に入ってからとても大切だと思う友達に出会った。


それが雪菜と和海。

雪菜とは同じクラスで、体育の授業でペアになったことがキッカケでこんなに親しくなった。

和海とは雪菜繋がりで知り合った。

まさかこの出会いでここまで仲良くなるとは思わなかった。



私が小学校中学年のとき、人から一目置かれる存在になってきて、友達はいたけど親友と呼べる存在はいなかった。

『キレイ』とか『カッコイイ』とか言われても私の心の中まで入り込む人なんて一人もいなかったから、

徐々に自分から一線を引いていった。



私を興味と好奇だけの、ほんの気持ちでしか寄ってこない人に、どんなにウンザリしたか。


それなら、独りでいた方がマシだと思うようになった。






それが、このふたりのお陰で崩れるなんて思わなかったよ。








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