届かないこの想いを、胸に秘めて。
ドアがほんの数ミリ開いてることに気づいた私は、ドキドキさせて覗いてみた。
覗くってよりも眺める、の方が表現には適してるかな。
──っ。
一瞬だけど、見えた。
私の横を、通った……っ。
濃いめのベージュのセーターに、前を交わずブレザーを羽織った中村くん。
すらっとした身形に少したれた目元とサラッとした黒髪が印象的な彼は、友達と笑い合っていた。
その笑顔にキュンとなった。