届かないこの想いを、胸に秘めて。





──ぽん。



一瞬なにもかもが、止まった気がした。

予想外のことに驚いて。驚きすぎて、まずは、自分が止まった。


頭の上に、大きな温かい何かが乗っかったから。

それは紛れもなく、キミの手なのだけれど。




どうしたの?!何が、起こったの!?

そんな言葉が頭の中を支配してて。

下を向いたままの状態で瞬きを繰り返した。




「あ、あの」

やっと振り絞って出した言葉にキミは「……髪、やわらかいね」と口にした。


声が間近に聞こえて、その上こんな状況に顔が熱くなる。




でもキミの言葉が、可笑しくて自然と笑ってしまった。


だって、何を思ってこんなことしたのか分からないけど

触った感想を言われるなんて初めてで、くすぐったくて、嬉しくて。

でも、恥ずかしくて。


いろんな感情が入り交じって、誤魔化すみたいに笑った。







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