届かないこの想いを、胸に秘めて。






「……あのっ、中村くんに聞きた──」


アナウンスが入った。電車が再開するって。
タイミングが良いような悪いような。


私の心臓が速さを増して大きく鳴り響く。

多分、キミには聴こえていないだろう。
まだ、アナウンスが流れているから。



「あ、なんか言った?」

「ぁ、ううん!何でもない、です!」


静かになったホームにふと思い出したようなキミの声が響く。
けど、それは私以外には聞こえないくらいの音量で。

なのに私には大きく響いていて、ドキドキした。




……よ、かった。最後まで言わなくて。
あのまま言っていたら、一体キミはどう反応していたんだろう。

そう思った今、本当に聞かなくて良かったと思った。


だって、後悔するのは私だもん……。







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