届かないこの想いを、胸に秘めて。
電車が来ると、いつかのように同じ車両に乗って、扉を挟んでそれぞれ両端に立った。
そしてキミは景色を眺め、私はドア越しに映っているキミを見ていた。
最寄り駅に着いて降りた私にキミは笑顔で手を振るから、私もそれに応えて振り返した。
とてもずるい表情をするなと思った。
こんなにもあったかくなって、嬉しくて、切なくさせるんだから。キミは。
本当に夢のようで、胸の高鳴りは家に着くいてからも治まることはなかった。
──ねぇ、キミはいま誰を想ってますか?
夜の空に問いかけた。
キミと繋がっている空に。
今日は珍しくいくつもの星が瞬いている。
私は、キミが、好き。
あの日キミが私を保健室へ連れて行った時から、ずっと。
たとえ、この恋が儚く終わってしまうとしても、私はキミのことを想い続けていたいよ。
──神様、どうしたらこの想いを伝えられますか?
……やっぱり諦めた方が、いいのかな。
伝えられないまま終わる恋なら、もうやめてしまえばいい、のかもしれない。
でも、まだ。そう簡単には消せない。消したくない。
だって、こんなにも強くキミを想ってる。
だから、まだ終わらせないよ。
そして明日こそ、香奈恵ちゃんに言おう。
自分の本当の気持ちを。
キミに近付くために、まずは第一歩を、踏み出すんだ──。