届かないこの想いを、胸に秘めて。
私の気配に気付いたのか、伏せていた顔をこちらに向けてきた。
眠そうな表情だけど、私を見た彼女は挑んでいるようなそんな目をしていた。
香奈恵ちゃんは席を立ってこっちに向かってきたけど、そのまま私の横を通り過ぎて廊下へ出ていこうとした。
私は何のためらいもなく、その背中に大きな声で叫んだ。
ざわついていた教室が一気に静まり返った。
強く閉じたまぶたをゆっくり開けた。
香奈恵ちゃんの足はピタリとその場で止まっていた。
…………っ言った、よ。言っちゃったよ。
少し放心状態の私は香奈恵ちゃんの背中を見つめた。
徐々に思考がハッキリしてきて、思い描いていたシチュエーションと全く違っていて、恥ずかしさのピークを迎えた。
……クラスみんなの視線が、痛い。
そして、ささやき声が私の心臓を速くさせた。
あちこちから聞こえる驚愕と好奇に満ちた声。
穴があったら、直ぐに駆けつけて入りたいっ!
そして、埋められたい……。
だって、私が叫んだ言葉は『ごめんなさい!』じゃなくて、
『好きです!』という大きな告白だったのだから。