届かないこの想いを、胸に秘めて。





「や〜ごめんごめん!遅く、なった……?」


ドアが勢いよく開いて、そこから息を切らし微笑を浮かべて入ってきた先生が、教室の異様な空気に目を丸くさせた。


みんなを見渡してから、最後に私を見て、もう一度目を丸くさせる。




……なんで、私を見るんだろう。別に変な格好していないのに。




「どした、長田。そんな所に突っ立って」


そう言って特に気にする様子もなく、教卓へ移動した先生。




そっか、先生は私だけが立っていることに不思議に思ったんだ。

香奈恵ちゃんは先生の死角にいるから、見えていないのかもしれない。


そう勝手に解釈した。





「ほら、席つけ~」

「……あ、てらしー」

「オワッ!?」


私に向かって言った先生は、廊下から突然姿を見せた香奈恵ちゃんに、思いっきり驚いた。


西本、こんなところにいたのか、と小さく呟いて。




それから先生は私達に席に着くように促した。



けど、それを香奈恵ちゃんが制し、私の手を掴んだ。


ビックリして思わず彼女を見上げた。





とても、いい表情をしていた。







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