届かないこの想いを、胸に秘めて。





「……私、香奈恵ちゃんに嫉妬してたの」


静かな教室に私の小さな声が大きく響いた。

天井から椅子を引く耳障りな音も大きく響いた。





『嫉妬』

それは私たちに亀裂が走った原因の一つ。

偶然キミが香奈恵ちゃんに伝えた言葉を聞いてから、そのだんだんと黒く染まった塊。


私がいけないのに。

それが肥大して、私は香奈恵ちゃんにっ。




「ごめんね。私の勝手な感情で、香奈恵ちゃんを傷つけて」


ごめんなさい、と背中に向かって深く頭を下げた。




もしかしたら、もう本当に終わってしまうかもしれない。
もう親友にも、友達にも、戻れなくなってしまうかもしれない。

……でもそうしたのは、私だ。



たとえ、どんな結果が待ち受けようとしても、私はすべてを受け入れる覚悟は、出来てる。





でも……っ。それでも。
やっぱり香奈恵ちゃんとは、かけがえのない友達でいたい、よ。親友でい続けたいっ。


……ごめんね。わがままで。
香奈恵ちゃんを手放したくないって勝手に思ってる。





「……せつな」


久しぶりに呼ばれた名前に、香奈恵ちゃんの背中が、私の視界がぼやけはじめた。






< 121 / 306 >

この作品をシェア

pagetop