届かないこの想いを、胸に秘めて。




「まだ、全てじゃないよね」

彼女は振り向いて私を見た。


穏やかな顔をしているけど、心を見据えているような目をしていた。




「私はね、遠慮とかして欲しくない。特に2人には。雪菜、ちゃんと本当のこと言ってよ」


語りかけるように言った柔らかい声が、心の奥にスッと入り込んだ。

濡れた頬を強く拭って、もう一度目を見る。


優しい目をしていた。




熱いのもが喉を焦がす感覚に襲われたけど、なんとか歯を食いしばって、それを引っ込めた。



……まだ、泣く時じゃない。



それは、伝えてから流せばいい。
だって、強い光が私たちを照らしている。
まるで、修復するかのように。



私が一歩、進まないと元に戻ることができないから。

だから、ちゃんと本当の気持ちを伝えるんだ。



手を強く握り締めた。希望と勇気を込めて。





「私はっ、これからもずっと、っ香奈恵ちゃんの親友でいたい!ずっと、避けてごめんなさい!バカで自分勝手で、最低でっ……ほんとうに、ごめんねっ……!」


全部言い終わる前に、前から勢いよく抱き締められた。



「っ、かなえちゃ、まだ」

「もういいよっ。……雪菜、ありがとう」


その声は掠れてて震えてたけど、とても嬉しさに満ちていた。








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