届かないこの想いを、胸に秘めて。





歯を食いしばって、立ち上がった。

誰も見ていないことを祈って。

でも、その願いはあっけなく終わった。



顔を上げると、立ち止まって私を見ている男の子がいた。


私は目を見開いてどんどん顔が赤くなるのを感じた。
それはもう沸騰しそうなくらい。


あの顔は絶対に見てしまったんだと確信した。
目が点だったから。


彼はスタスタと私の元へ来た。


『だ、大丈夫……?』

心配した声音で問いかけてくる彼に私は静かに頷いた。


そして、逃げるように私は立ち去ろうとした。


でも、体が動かなかった。




それは彼が私の手首を掴んでたから。







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