届かないこの想いを、胸に秘めて。





「あれ、告白じゃないよ」


静まり返った教室に香奈恵ちゃんの落ち着いた声が響いた。



「でもっ、中村くんは、」

「その中村が言った『好き』は私に向けたものじゃないってことだよ」




じゃあなんで……。

そう思ったけど続けて言う香奈恵ちゃんに私は顔を赤くさせて、机に突っ伏した。


そばで笑い声が聞こえて、さらに顔が熱くなる。



最悪、だ。そして大バカだ。

もう、穴に埋まりたい……。
あの時最後まで聞いてればよかったんだ。

そしたら、あんなことは起こらなかったかもしれない。




「だろ?ほんと雪菜かわいいわ〜」

「さすが私たちのせっちゃん!」


笑いながら頭を撫でられる。


和海ちゃんなんか我が子のような言い方してるし。

もー。笑わないでよ。恥ずかしいっ。


伏せていた顔を上げると、ふたりの笑った表情が見えた。



「もうこれで大丈夫だね」

「え?」

「これで私たちに秘密事なくなったでしょ」



あぁ、そっか。ふたりは気付いてたんだ。


やっぱり私の親友には秘密事を隠し通すことは難しいなと思った。

こんなに親身になってくれる友達ってなかなかいないと思う。




けど、私の目の前にはいるんだ。大切な友達。





「ありがとう」




また絆が深まった。
大切なことも、大切じゃないことも全て、大切に思ってくれる人には話すべきなんだ。

それをまた2人に教えてもらったよ。





……キミにもいつか、伝えられるかな。伝えたいな。




窓に写る空は桃色と空色で、私の心境をして表しているようにみえた。









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