届かないこの想いを、胸に秘めて。





空がオレンジ色に染まり出した頃、私たちは教室を出て、昇降口まで歩く。



前にいる2人を後ろから眺めて、親友っていいなって思った。



以前まではずっと後ろから眺めているだけだったけど、

もうお構いなしに後ろから抱きついてみた。



ふたりは驚いた様子で私を見るけど、一瞬にして表情が柔らかく崩れた。




「あ!」



唐突に香奈恵ちゃんが声を張り上げたのは職員室前を通っている時。


それから私をチラッと見て笑って、また前を向いた。

不思議に思い、同じ方向を向いた。



心臓が、跳ねた。静かだった音が速度を少しあげる。


左側にいる和海ちゃんが耳元で「よかったね」なんて言うから、今度は顔が熱くなってきた。




嬉しいはずなのに、頷くことができない。
固まってしまう。



こんなんだからダメなんだ。
キミを見るだけで、動けなくなってしまうから。



歩き進めながらキミのことをボーッと見つめる。

職員室から出てきたキミは手に持ってる紙を小さく折って、リュックに押し込んでいた。

その表情はまだ遠いからよく分からなかったけど、ため息をついているように見えた。









< 139 / 306 >

この作品をシェア

pagetop