届かないこの想いを、胸に秘めて。





不意に顔をこちらに向けたキミと目が合った、気がした。


それを見た香奈恵ちゃんが「おーい!」と手を振って呼ぶ。


慌てて香奈恵ちゃんを見ると顔だけを向けてイタズラな笑みを浮かべた。



「せっかく本人がいるんだから、もっかい言ってもらおうよ」


のんきに言う彼女を小さく睨む。



絶対に楽しんでる……。
私のためにそうしてるのかもしれないけど。





「ん?どうしたの」


声がした。それもすぐ近くで。
目線を少し上へと向けると、タレ目のキミが首を傾げて笑っていた。


その仕草に表情に、キュンとする。




「夏休み前にさ、中村が私に言ったこと覚えてる?」


どストレートに言う香奈恵ちゃんに、キミは少し考える。



「ほら、下駄箱で大きな声で言ったじゃん」


その出来事に繋がるヒントを与えると、キミは小さく声をあげた。

そして、思い出したみたいにプッと笑い出した。










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