届かないこの想いを、胸に秘めて。





「で、なんでそんなこと聞くの?」


それを聞いて顔が小さく引つるのが分かった。


私たちを見て首を傾げる姿に胸を高まらせていると、「長田さん」と呼ばれた。




「は、ハイ」

反射的に返事をしたら声が裏返ってしまった。それにキミが笑うから恥ずかしくなって一度目をそらした。




「なんで?」


視線を戻すとそう問われてしまうだけで、私は口をつぐんだ。


だって、私の嫉妬がキミの言葉が原因だなんて……絶対に言えない。



というか、なんで私に聞くのっ。
とても困る!




「雪菜に聞いても教えられないよ。ねっ」

肩に手を置かれた。



……なんで、そんなこと言うの。香奈恵ちゃん。
不審がられるじゃん!



……ほら、不思議な顔で見てきてるじゃん。




「……そうなの?」

「え……っと……」



なんなのこの状況といい、言い方といい。
心臓に悪すぎるよっ。


好きな人がこんな目の前にいるだけでこんなにもクラクラして、ドキドキして、何も言えない。



……でも、言うならこれしかないのかな。


もう一度私に問いたキミに伝えた。








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