届かないこの想いを、胸に秘めて。




キミに『好き』って言えたらどんなに楽なのかな。


どうすれば心が軽くなって、雲がかかってない心になるのかな?



やっぱりキミに伝えるべき、なんだよね……。


いつか和海ちゃんが言った言葉を思い出す。


『両方大事にしなよ』

『まずは一歩踏み出そうか』



一歩は踏み出せたけど、やっぱり難しいよ。

友だちに伝えるのと、好きな人に伝えるこの緊張感とかいろいろと違うから。




そう色々考えていると自分の名前を呼ばれて我に返って、返事をした。

そしてまたボーッとする。




この距離は近いんだけどな。
…………遠いよね。


キミは私の気持ちに気づいてないから尚更。

気づかれても困るけど。



はぁ……。
ほんとこんな自分情けない。口があるんだったら正直に伝えればいいことなのにね。


こんなに苦しくなるなんて、はじめてかもしれない。

……なんでかな?



過去とは、また違う感覚。
こんなに苦しくて、嬉しくて、辛くて、幸せで……そんないくつもの感情がころころ入れ替わる。




「……どうしたの?」


そんな声が聞こえたのは、また息を吐いてからだった。

前から聞こえていつの間にか下を向いていた顔を上げた。




ドキリと心臓が跳ねて、目まで飛び出そうになった。


プリントを渡すために後ろを振り向いたであろうキミは、手に持っていたのを机に置いて、上半身だけ完全に私を向いていたから。


腕が机の上に置かれてあって、柔らかく微笑みながら少し首を傾げているキミ。


どこを見たらいいのか分からなくて、とりあえず先にプリントを1枚取って、後ろに回した。









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