届かないこの想いを、胸に秘めて。




前に向き直ると少し姿勢を正したのか、向きが変わってた。

横を向いた状態のキミは私に向きやすい態勢になっていた。




……なんで、こんな状態に?!


どうしよう。胸が痛い。バクバク言ってる。

キミには聞こえてないと思うけど、届いてたらどうしよう。




「なんか、また元気ない……?」

先生そっちのけでキミが私を見て聞いてきた。


……なんで、そんなこと聞くの?



「あ、違うんだったらいいんだ。なんかごめんね」

「ぁ、ううん」


何故か謝るキミに私はなんか申し訳なく思った。

心配されるような顔してたから、そういう風に言って、くれたんだよね?




……なんか、嬉しいかも。


不覚にもそんなことを思ってしまい、今にも崩れそうな顔を懸命に耐える。


そうしないと、とんでもない顔になっちゃいそうだから。
まして、キミの前でへんな顔は見せられない。




「やっぱ、おれの勘違いだったみたい」

そう言ったキミは笑ってた。



なんでそんなこと言ったのか不思議に思ってると、そのままの顔で私に指を向けた。



「笑ってるから」

「えっ」

「だから、おれの勘違いだったみたい」


そう言ってキミは私に背を向けた。




……中村くん。
あのね、これは、ちがうんだよ?
笑ってないんだよ。……ニヤけてたんだよ。



背中に語りかけた。



自分の顔は多分ほんのり赤くなっていると思った。


どうしよ。恥ずかしいのと嬉しいので体中が熱い。



……キミって、本当にわかってない。
こんなに私の心を締め付けて、熱くさせて、キミをさらに好きにさせてるってことに。


……ずるいよ。





──好きだよ、キミが。


帰り際、友達と笑いあっているキミの背中にそう言っていつもの道を歩んで行った。



今日は時間が過ぎるのがとても速く感じた。









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