届かないこの想いを、胸に秘めて。





「……てことは、初恋?」




──っ!



香奈恵ちゃんが不意にそんなことをいうから、グサッとドシッと襲いかかった。体中に。



いま自分でも思ったことを声に出して言うから。



うわあ……。
もう恥ずかしすぎて。言葉にならない。

私の初恋はキミだってことに気付くと胸の高鳴りが最高潮に達する。



でもそれは静かに、リズムよく脈を打つ。
トクントクンと。

痛くなく、甘い心地よさが広がった。





「前に言ってたけどさ」

と言い出した和海ちゃんに伏せていた顔を向けると目が合った。

そして、ふんわりと笑って言葉を続けた。



「告白するのが怖いって言ってたけどさ、それはただ言わなくていいと思ってたからなんじゃない?」



それは香奈恵ちゃんとの関係が崩れた翌日に話したことだ。


和海ちゃんが私を心配して、お泊まりまでして、そしてその夜、香奈恵ちゃんとキミを想って泣いて話し合った日。



ちゃんと覚えてるんだと嬉しくなった。









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