届かないこの想いを、胸に秘めて。




日が沈み、外が暗くなった頃。

他愛ない話をしながら進めた勉強もはかどり、私と香奈恵ちゃんは和海ちゃんに見送られながら夜道を歩いていた。



外はひんやりしていて、コートを羽織っていて丁度いい思った。




「たのしかったね」

「ほとんど雪菜の話だったけどね」

「うっ」

「ま、区別ついて良かったじゃん?」



笑顔を向けるけど目の奥が光って見えるのはたぶん、街灯のせいだと思うことにした。


香奈恵ちゃんのことだから、私をからかっていると思うけど。

もう良しとすることにするよ。
もう認めてるから。


これが私の、初恋ってことに。





「じゃ!また明日ね」

「うん!」


そう交わして私たちも別れた。


後ろから「気を付けて帰るんだよ〜」って大きな声で言うから、慌てて人さし指を口元に持っていって、静かにするように制する。


そんな大きな声で言われなくても、気を付けてるよ!
全く、私はそこまで子どもじゃないんだからっ。


まるでお母さん。いやそれを通り越して、過保護なおばあちゃんみたい。


そんなことを思いながら手を振って笑う香奈恵ちゃんに私もそうして、家へ向かった。



見上げた空は、小さな光が数個みえた。



キミはいま何をしてるのかな。
……また、明日も会えるかな?


そう思うとキュッと胸のあたりが締めつけられて、甘酸っぱい想いが染み広がった。








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