届かないこの想いを、胸に秘めて。





委員会は研修旅行で潰れるため、早く集まるようにしたと先生が言っていた。


研修旅行後でもいいのにと思っていると、『出張』という言葉を聞いて納得した。



キミの背中を眺めるだけで時間は進んでいって、いつの間にか解散していた。


私が席を立つとキミと目が合って、「じゃあね」「さようなら」の二つの声が重なって、キミに背を向けて教室を出ようとした。




そこからだ。何かが自分の中で歪んでいったのは。




ドアから顔を覗かせた、目の大きな女の子。色白で、栗色の髪の毛が肩ぐらいまであって、とても可愛らしいなと一目で感じた。



私は、目を耳を、疑った。




目の前の女の子が、キミの名前を呼んだから。下の名前を。


入れ違うように私は廊下へ、彼女はキミの元へ。



そして、鈍器で頭を殴られた感覚が私を襲った。




聞きたくなかった。そう瞬時に思った。

とっさに速くなる足は、廊下を駆けて、校門を出て、坂を下って、駅へ。


喉が、心臓が、息が、痛くなった。





『サキ』


そう呼んだキミの声。とても柔らかな声で彼女をそう呼んだ。

彼女も同じようにキミを呼んでいたから、とても気になって、苦しい。




その日の夜は、もう何も考えたくなくて早く寝についた。

けど、こんな時でもキミの夢を見てしまってとても怖くなった。








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