届かないこの想いを、胸に秘めて。





「あ、淳介からだ」


耳がむだに反応した。ううん、してしまったんだ。


キミの名前を聞いたから。
心も耳も、全てがやっぱりキミの存在に反応してしまう。



席を外した鴇田くんはドア口でなにかを話してる。

内容までは聞こえないけど、笑っているから楽しい話でもしてるのかなと思った。



香奈恵ちゃんがみんなの分をきり終えた頃。

鴇田くんが戻ってきた。
その表情はよく香奈恵ちゃんがするのと同じ顔にみえた。


なにかを企んでるような、楽しんでいるようなそんな表情。



だから思わず聞いてしまった。電話楽しかったの?って。



思わず馬鹿なことを聞いてしまったなと反省した。


そしたら笑顔で頷いて、そして私に時間を与えた。

ほんの数秒だけ。理解するための時間を。








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