届かないこの想いを、胸に秘めて。
なにか話さなきゃ。
そう思うけれど、なかなか話題が見つけだせなくて。
少し目線を下から前へ動かすと、和海ちゃんの顔が見えた。
私と目が合って優しく微笑む。それから小さく頷いた。
それは『がんばれ』って言ってるのだろう。
応援してくれてるのは嬉しいんだけど、無理だよ、こんな。
だって距離が近いんだもん。
もうドキドキはピークを迎えているんだよ?
好きな人がこんなにも近くにいるんだから。
「わ、私……飲み物、買ってくるね」
限界まできた瞬間。そんなことを口に出していた。
それは逃げるための口実。
不審がられたかもしれない。
でもそうしないと今にも吐いちゃいそうで。なんとかここから脱出するためには、なにか言わないといけなかったから。
だからそう言って部屋を出た。