届かないこの想いを、胸に秘めて。





「長田、さん?」

「ぁ……えっと、これは……っ」


息が、止まった。でもそれは一瞬で。


急いで壁から離れる。



なんで、キミがここに……!?


うわ、どうしよう。変なの見られちゃった!


恥ずかしすぎてキミの顔が見れない。



……前髪が長くてよかった。


なんて思いつつも、心は正直で。


顔から火が出てきそうなくらい熱くなってきた。



キミが近づいてくる音がした。
それに胸が高鳴る。



「大丈夫?」


頭の上から声がしたから、小さく頷いた。


顔をのぞき込まれなくてホッとしてるけど、少し残念に思う自分がいて、バカだなって思う。




「もう、自販機行った?」


そう言われてハッとした。

逃げるために言った口実をキミは覚えていて、なんだか居た堪れなくなる。



ゆっくり歩くんじゃなかった。
そしたら、こんな展開にはならなかったはずなのに。


会えて嬉しいはずなのに、どこか気まずさを感じて今すぐここから逃げ出したくなった。










< 178 / 306 >

この作品をシェア

pagetop