届かないこの想いを、胸に秘めて。
「長田、さん?」
「ぁ……えっと、これは……っ」
息が、止まった。でもそれは一瞬で。
急いで壁から離れる。
なんで、キミがここに……!?
うわ、どうしよう。変なの見られちゃった!
恥ずかしすぎてキミの顔が見れない。
……前髪が長くてよかった。
なんて思いつつも、心は正直で。
顔から火が出てきそうなくらい熱くなってきた。
キミが近づいてくる音がした。
それに胸が高鳴る。
「大丈夫?」
頭の上から声がしたから、小さく頷いた。
顔をのぞき込まれなくてホッとしてるけど、少し残念に思う自分がいて、バカだなって思う。
「もう、自販機行った?」
そう言われてハッとした。
逃げるために言った口実をキミは覚えていて、なんだか居た堪れなくなる。
ゆっくり歩くんじゃなかった。
そしたら、こんな展開にはならなかったはずなのに。
会えて嬉しいはずなのに、どこか気まずさを感じて今すぐここから逃げ出したくなった。