届かないこの想いを、胸に秘めて。
「淳介ー!一緒に帰ろ!」
委員会が終わった教室にキミを呼ぶ声が近づいてきた。
ふたりの姿を見たくなくて、私は黙ったまま何も言わず帰ろうとした。
キミの姿も見ずに。
「長田さん!お疲れ様」
後ろから聞こえたキミの声に振り向くと、手を振ったキミがいた。
反射的に私も同じ動作をしようとしたけど、やめた。
そばにいる彼女と目が合ってしまったから。
その目は何を語っているのかを理解した。
だから、キミに小さく笑って会釈をして教室を出た。
歩いていくうちに顔の表情は崩れていくのがわかった。
目の奥が痛くなって、喉が熱くなってきた。
だめだよ、泣いちゃ。
泣くのは二人の前だけでいい。
でも、ホロリと一つ零れた。
「っ……ぅ」
我慢しなきゃ。
上履きからローファーに履きかえる時、近くから二つの声が聞こえてきた。
とても楽しそうな声が近づいてくる。
私にはとても煩く思う声。
嫌な声。
聞きたくない声。
ふたりの弾む声は私を嫉妬させる。
スクバを持つ手に力を入れて走った。
目の奥が、喉が、心が、全てが痛い。
涙は流れていなかった。冷たく感じたのは肌に冷たく突き刺さる風だった。
坂を降り切ると呼吸を少し整えながら歩いた。
もう一度目元を触って確認してみたけど、涙は流れていなかった。
ただ頬が冷たくなっているだけ。