届かないこの想いを、胸に秘めて。





「……恋って、苦しいよね……」


空を見上げたままポツリと鴇田くんが言う。

私も同じように上を向いた。


厚い灰色の雲が目の前に広がっていた。星はひとつも見えない。


まるで私を見てるみたい。




「……うん。苦しい」


キミに恋をしてから苦しいと思ったことは多々あった。


でも、こんなに苦しくなるなんて思わなかった。


3度目の恋は、本当の恋と知った現在(いま)。それは初恋ということも。


なんでこんなに苦しまないといけないんだろう……。




「ぷっ、……まさかそう来るか」

「なんで、笑うの?」

「ううん、なんでもない。……ただ」



一度目を伏せて、私を見た。
その目は何かを決心したようにみえて、小さく胸が高鳴った。





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